歓声前夜の忘備録

見つけても秘密だよ

松陰は正しかった

父親に日本の歴史史上最も尊敬する人は?と何気なく尋ねたことがあった。

 

 

私の父親は世間一般的には博学という言葉でくくられる類の人で、オチのない、笑いを取ろうともしない、まあでも、なるほどなあ。とは思える話を長々とするのが好きだ。常に多少説教くさくて、哲学じみているのだ。まあ十九年間それを聞かされてきた側としては為になりつつ、若干めんどくさい。

 

娘的にはもっと芸能人のゴシップやら面白おかしい話や、なんなら親父らしく親父ギャグなんかを披露して欲しいと思ったこともあるが、いままで私は実の親父からは親父ギャグをただの一度も聞いたことがない。

 

まあそんな父親ということもあり、きっと私がほとんど知らないような偉大な人物を意外な理由で尊敬しているのではないか。と心の中では期待していたのだ。

 

「ん~、でもなあやっぱり吉田松陰はすごいと思うかなあ~~」

 

いや、めっちゃ普通じゃーーん笑

ええーーーーーなえるーー

 

なんてありきたりな答えだろうか、確かに吉田松陰はすごいことは認めるが、私はもっとマニアックでなんて言うんだろうか、もっと、私のわずかな知的好奇心ごときを簡単に完璧にを満たしてくれるような人物を言ってくれることを期待していたのだ。

 

世の中の心の底から吉田松陰ファンには先に謝っておきたい。心底陳謝。

吉田松陰ってすごいけどなんか尊敬する人物としては普通なきがしちゃったり、なんならまじで、好きな日本の偉人を聞かれて思いつかなかった時に言う日本の偉人ランキング6位ぐらいじゃない?圧倒的1位が坂本龍馬だったとしてさ、諭吉とか野口英世がいたとしても5位圏内も全然狙えるって感じがする。

 

私が期待してたのはもっと渋沢栄一とか杉原千畝とか、なんかそういう感じでして、有名ですごいんだけど普通の小学六年生は知らないよねっていうラインを期待してたわけで。

 

まあでも理由を聞いてみようと、だって私の知らない面白いエピソードなんかが出てくるかも知れないし、なんていったって私の父は偉人の名言なんかを散々私に語っては、説教臭く諭してきたのだから。

 

「あの辞世の句はすごいよね~、親思う心に勝る親心今日のおとずれなんと聞くならん、あれは真理だなあと思うね。」

 

いやあ~、まじか、理由もめっちゃ普通じゃん~~

いつもの感じどこ行ったのさ(T_T)/~~~

 

この話は確か私が高校二年生とかその位のころだったと思う。その時は自分が期待したような答えが返ってこなくてがっかりしたが、最近になってこの父の言葉の意味を痛感したりもする。

ひとりでアメリカに来て親元を離れて、一緒に住んでいたころは鬱陶しくてうざったかった両親にいままでどれほど支えられ愛情を注いでもらってきたかを、この身をもって知るのだ。私の両親は常に私と弟たち、三人のことだけを考えてきてくれたんだと思う。甘やかされ、あからさまに可愛がってはくれはしないが、決して威圧的ではなく、気分で当たったりされたことはなく、いつも厳しく正しく優しかった。

 

反抗期で両親が大嫌いだった頃もあるが、二十四時間以上口を利かなかったことなどはただの一度もないし、ごはんを作ってもらえなかったこともないし、死ねとかババアなど口が裂けても言ったことがない。無意識のうちに親がどれだけ自分たち子供のことを想っているか、そして私たちが暴言を吐くことでどれほどに傷つくかをわかってたんだと思う。私は物心がついてからそれなりにしっかりとした感謝や尊敬その他諸々両親への想いは持ってきたと思うし、両親にもそれは少なからず伝わっていると思う。

 

そんな私に「あの辞世の句はすごいよね~、親思う心に勝る親心今日のおとずれなんと聞くならん、あれは真理だなあと思うね。」と言った父親の真意は分からないが、少なからず娘である私へ、君たち三人がどれほど両親を想っていようと、自分らが親として君ら兄弟を案じる気持ちは更に遥かに多いんだよ、と、そんな意味があったような気が今はする。

 

動物である人間の本能として子孫繫栄を望むならば、自分の祖先よりも子孫に重きを置くのは自然なことなのかも知れない。

 

これは私に限ったことかもしれないが、弟が二人いる私の身からすると兄弟や姉妹間でも、兄や姉のほうがより弟や妹を案じ想っているのではないかなあ、と思う。私より明らかに出来の良い弟たちには身長などとっくに抜かされてスポーツなんかでは到底敵わないと思うが、それでも少しでも悲しいことが彼らにないといいと思う。もし両親がいなくなるようなことがあったら自分の一般的な幸せを犠牲にしても彼らには普通に幸せな生活を送らせてあげたいと思う。根拠はないが彼らの幸せを彼らが私の幸せを想う以上に強く想っている自信がある。

 

家族愛ブログみたいになってんなあ、なんかやだなあ

コロナに四苦八苦する生活が早く終われと祈るばかり